【緊急コメント】
社会全体の利益を考えた、やむをえない判断

大阪市立大学 創造都市研究科 教授 中野 潔氏
 
 5年前に拙著で述べているとおり、無許諾での著作物ファイルのやりとりに大いに使われることを知っていながら、P2Pツールなどを提供し続ける場合、著作権侵害に問われても仕方がないと考えている。

 一方で、今までのところ、いわゆる「ベータマックス判決」を支持していた。VTRも複写機も、無許諾での複製にも使われるが、合法的な複製にも使われる。
 無許諾での複製に使われることだけを取り上げて、ツールそのものが違法だと決め付けるのは避けるべきだと考えてきた。
 しかし、5年前に比べるとインターネットの普及率が急速に高まり、しかも、数Mbpsの通信容量を備える通信回線の家庭への普及率も高くなっている。このような状況下では、無許諾での複製を防ぐことについて何らの配慮がなされていないツールについて、ツールそのものの開発が権利侵害になる可能性があるとするのは、いたし方のないことであると筆者は感じ始めている。
 大気汚染防止、水質汚濁防止、交通事故防止など、多くのユーザーに悪意がなくても、非常に多数のユーザーの行為が積み重なって、一部の市民の権利がおびやかされるケースが、今までもあった。そうした場合、完全に整合のとれたきれいな論理が組み立てられなくても、一番効果のある部分に関与する勢力に責任を負わせて、社会全体の利益を最大限にするよう努める――といった方策がとられたことがある。今回の司法判断は、広い意味でそれらに似たケースと考えられるのではないか。
 やむをえない判断であったと考える。
 

<中野氏プロフィール>1980年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻、修士課程修了。機械メーカーC社、出版社B社、機械メーカーD社、出版社A社、早稲田大学、国際大学GLOCOMなどを経て、現職。単独著書「知的財産権ビジネス戦略 改訂2版」(オーム社、01年)。共著は「サイバージャーナリズム論」(前川徹、中野潔。東京電機大学出版局、03年)の他多数。日本出版学会理事、情報処理学会電子化知的財産・社会基盤 (EIP)研究会幹事、情報通信学会 関西支部役員、国際大学GLOCOMフェロー。テクニカルコミュニケーター協会評議員、KANSAI@CANフォーラム 理事、大阪安全安心まちづくりICT活用協議会副会長。

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