【ネット時評 : 湯川 抗(富士通総研)】
「Web 2.0」はバズワードか?

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 “Web 2.0”が昨年の後半からインターネットビジネスの関係者の間で話題を呼んでいる。これまでのWebを活用したサービスがWeb1.0だとすると、Web2.0とは「次世代のWebのあり方」として1年以上前から米国の関係者の間で使われ始めていた言葉である。Web2.0には正式な定義があるわけではなく、Webサイトがあたかもプラットフォームのように利用できることを指している程度に認識しておけば十分であろう。定義をすることでWeb2.0という言葉の意味を限定してしまうにはまだ早い。

 Web2.0が業界の注目を浴び始めたのは昨年の9月にTim O’Reilly氏(オープンソース・ソフトウエアのエバンジェリストであり、O’Reilly Mediaの創立者)がWeb2.0の概念を整理した“What is Web 2.0――Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software”という論文を発表してからのことである。その後、Web 2.0という言葉は関係者の話題をさらい、現在では、ある特定のサイトがWeb 2.0的かどうかを診断するためのサイトまである。

 Web2.0の中心的要素である「プラットフォームとしてのWeb」という考え方は、1990年代後半から何度も提唱されてきた。O’Reilly論文も、1990年代のインターネットバブル以前から様々な識者によって語られてきた未来のインターネットビジネスのあり方を、具体的に述べたのに過ぎないという見方もできる。

 しかし、O’Reillyの論文によってWeb2.0が注目を集めたのは、この論文がこの新たなビジネスのコンセプトを、実在の企業名を明記しながら多くの関係者が共感できる形で説明した点にある。また、Web2.0的企業として挙げられた企業はいずれも大成功を収めたネット企業であり、それら企業のビジネスモデルをWeb2.0、つまり次世代のWebの観点から分析したO’Reillyの論文は説得力がある。

 Wiredの編集長であるChris Anderson氏が2004年10月に同誌に執筆したコラム“The Long Tail”以降、特にインターネット上のマーケティング理論として話題となった「ロングテール」(注)や、2014年までにGoogleとAmazonの合併による「パーソナライゼーション型メディア」の出現を予測して注目された「EPIC(Evolving Personalized Information Construct)2014」など、新たな理論やインターネットの将来像に関わるコンセプトは近年次々と生まれている。それらと比較してもO’Reilly論文は、今後のネットビジネスを考えるうえで示唆に富んでいると言える。

Web 2.0的企業の特徴とは

 O’ReillyがWeb 2.0的企業の特徴として挙げるのは以下の7点である。

・パッケージソフトウエアではなく、費用効率と拡張性の高いサービスを提供している。
・独自性があり、同じものを作ることが難しいデータソースをコントロールする。
・ユーザーを信頼し、共同開発者として扱う。
・集合知を利用する。
・カスタマーセルフサービスを通じてロングテールを取り込む。
・単一デバイスの枠を超えたソフトウエアを提供する。
・軽量なユーザーインタフェース、軽量な開発モデル、そして軽量なビジネスモデルを採用する。

 上に挙げた7つの項目に当てはまるものが多いほど、その企業はWeb 2.0的な企業だと考えられるが、一方でO’Reillyは、7つの項目すべてを少しずつ満たしているよりも、特定の分野で突出した能力を示していることの方が、Web 2.0的であるとする。

 しかし、実際には上記のWeb 2.0的企業の特徴は互いに関連したものである。集合知の利用はユーザーへの信頼の下に成り立つし、これらと無関係にロングテールを取り込むことは困難であろう。また、単一デバイスの枠を超えたソフトウエアを提供する、あるいは、軽量なユーザーインタフェース、軽量な開発モデル、そして軽量なビジネスモデルを採用するといったことはロングテールを取り込むための手段、ととらえる方が妥当だ。

Web 2.0はバズワードか?

 主にビジネスの世界で、一部の専門家が一時的に用い、その後消えていく一種の専門用語は「バズワード」といわれる。特にIT業界ほどバズワードが飛び交う業界はないだろう。Web 2.0も、技術者にとっては次世代インターネットのビジョンの仮説のひとつに過ぎず、後で振り返った時には、単なるバズワードとしか思われないかもしれない。しかし、O’Reillyの提示したWeb 2.0的企業の特徴をよく整理してオペレーションに落とし込めるかどうかは経営者にとって極めて重要な意味をもつと思われる。

(注)ロングテール:特にe-commerceでは、特定の人気商品や注目新製品だけが集中して売れるのではなく、幅広い商品が少しずつ売れる、といった傾向が見られるケースが増加している。このように需要が集中する「頭部」だけではなく、細かい需要がある「長い尾」の先までサービスを提供する考え方

<筆者紹介>湯川 抗(ゆかわ こう)
富士通総研 経済研究所上級研究員
1965年 東京都生まれ。1989年上智大学法学部卒。96年コロンビア大学大学院修了(MS)。2005年東京大学工学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。現在、横浜市立大学国際文化学部非常勤講師。東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを兼任。専門はインターネット企業の動向とクラスター。【執筆活動】「情報系マイクロビジネス」(2001年、共著)「クラスター戦略」(2002年、共著)など。   ホームページ http://www.fri.fujitsu.com/jp/modules/specialist/list_03.php?list_id=9024

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